「社内でどのSaaSがAI機能を使っているか把握できていない」「AIのデータ学習による情報漏洩が心配」とお悩みではありませんか?AI搭載ツールの普及が急速に進む今、AIを搭載したSaaSを適切に管理する体制の構築は、企業の信頼性を守る上で重要なテーマとなっています。本記事では、AI搭載SaaSの管理を便宜上「AISaaS管理」と呼び、その必要性や従来のSaaS管理との違い、管理を支援するツール、選定のポイントまで詳しく紹介します。
AI搭載SaaS(AISaaS)の登場で変わるセキュリティの定義

本記事における「AISaaS」とは、AI機能を搭載したSaaSを指します。また、「AISaaS管理」は標準化された固有の管理領域を示す用語ではなく、AI搭載SaaSの利用状況やアカウント、コスト、データの取り扱い、セキュリティリスクなどを組織的に管理する取り組みを表す本記事上の呼称です。
AIを搭載したSaaSの普及に伴い、従来のセキュリティ対策も見直しを迫られています。これまではアカウントのIDやコストの管理が中心でしたが、今後は入力データの取り扱いルールやAI機能の安全性を評価する体制を整え、会社が把握していないAI利用を抑える仕組みを構築しなければなりません。
多くのクラウドサービスにAI機能が搭載されるようになり、従業員が意識せずにAIを利用する「隠れAI」のリスクが浮き彫りになっています。実際に、セキュリティ評価プラットフォームを提供するAssuredの調査(Assured独自データ調査結果)によると、約4割のクラウドサービスがAIを利用または開発しているというデータもあります。
従来のSaaS管理では、誰がどのツールにアクセスしているかを把握することが主な目的でした。しかし、AI搭載SaaSの管理では、入力されたデータがAIの学習に使われるか、著作権やプライバシーを侵害するおそれがないかといった、データガバナンスの視点から利用規約やプライバシーポリシーを個別に精査するプロセスを標準化しなければなりません。個人情報の扱いは個人情報保護委員会の生成AIサービス利用時の注意喚起、著作権は文化庁のAIと著作権を判断基準として照らし合わせてください。

適切なガバナンスがない企業を脅かす3つのリスク

適切なガバナンス体制を構築しないままAI搭載SaaSの利用を放置すると、企業は深刻なセキュリティリスクに直面します。特に、従業員の独断による利用や、利用規約の確認不足が引き起こすトラブルは、企業の社会的信用を大きく失墜させかねません。
具体的なリスクの1つ目は、従業員が個人アカウントで生成AIを利用することによる「シャドーAIの利用による機密情報の流出」です。会社が把握していないツールに顧客情報やソースコードを入力してしまうことで、外部への情報漏洩につながる危険性が高まります。
2つ目は、データ所有権や著作権侵害のリスクをはらむ「利用規約の未確認に伴う法的トラブル」です。商用利用が禁止されているAIツールを業務で使ってしまったり、生成物が他者の権利を侵害していたりする場合、法的な責任を問われる可能性があります。
3つ目は、「入力データの取り扱いを確認しないことによる意図しない学習利用」です。入力データが学習に利用されるかどうかは、サービスや契約プラン、API利用の有無、管理者設定などによって異なります。管理者は利用規約とデータ管理設定をサービスごとに確認し、必要に応じて学習利用の停止設定や入力可能な情報のルールを整備してください。
IT資産の一元化を支援するSaaS管理ツール2選

社内のAI搭載SaaSの利用状況を把握する第一歩は、既存のSaaSやアカウントなどのIT資産を漏れなく整理することです。ここでは、その基盤づくりを支援するSaaS・IT資産管理ツールを2つ紹介します。製品によってAI固有の管理機能の有無や対応範囲は異なります。ワスレナイには生成AI管理機能「ワスレナイAI」が案内されていますが、zoobaを含め、導入時には自社が必要とする検知・分析・監査機能や契約条件を各提供元へ確認してください。
| サービス | 主な用途 | 特徴 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| zooba | SaaS・IT資産の一元管理 | 従業員台帳やアプリケーション台帳による管理を支援 | AI固有の検知・監査機能の有無と台帳の連携範囲 |
| ワスレナイ | SaaSのアカウント・コスト管理、生成AI利用の可視化 | 「ワスレナイAI」により、未許可AIサービスの検知や利用料金・トークン消費量の可視化、部署・プロジェクト別の利用分析を支援 | 検知対象となるAIサービス、分析範囲、導入支援の内容 |
1. zooba(zooba株式会社)
zoobaは、社内のSaaSやIT資産の一元管理を支援するツールです。従業員台帳やアプリケーション台帳を活用することで、誰がどのツールを利用しているかを整理し、会社が把握していないSaaSを発見する手掛かりを得られます。
不要なライセンスの確認や管理業務の効率化に役立ちますが、シャドーAIの検知やAIサービスの学習利用設定の監査に対応できるかは、導入前に提供元へ問い合わせておくと安心です。

2. ワスレナイ(株式会社SHIFT)
ワスレナイは、情報システム部門によるSaaS管理を支援する一元管理ツールです。散らばりがちなSaaSのアカウント情報や利用コストを整理し、管理対象を把握しやすくします。
さらに、生成AI管理機能「ワスレナイAI」では、未許可のAIサービスの検知、利用料金やトークン消費量の可視化、部署・プロジェクト別の利用分析などが案内されています。一般的なSaaS管理に加えて、生成AIの利用実態やコストを把握したい企業にとって検討材料となる機能です。詳しい対応範囲や利用条件は、株式会社SHIFTの「ワスレナイAI」に関する公式案内と提供元への問い合わせで確認してください。
なお、AIサービスへの入力内容や学習利用設定まで監査できるかは、事前に見極めておかなければなりません。自社の管理目的を整理した上で、検知対象、取得できる記録、設定監査の範囲を細かくチェックしておきましょう。
自社に最適な管理ツールを選定するためのチェックポイント

自社のAI搭載SaaSの管理を支援するツールを選ぶ際は、アカウント管理機能に加えて、AI特有のリスクに対応できるかを個別に見極めなければなりません。一般的なSaaS管理ツールとAIガバナンスを支援するツールでは機能範囲が異なるため、自社の管理目的を明確にした上で比較しましょう。
選定時に重視すべき1つ目の基準は、「AIの利用状況を検知・可視化できるか」です。従業員が会社の管理外で使っている「シャドーAI」や、既存SaaSに組み込まれたAI機能をどこまで把握できるか、デモや試用期間を通じて検証しておくと確実です。
2つ目は、「既存のIDプロバイダー(IDP)との連携性」です。自社が利用するIDPと連携できれば、アカウントの追加や削除を効率化し、管理の手間を抑えられます。対応するサービスや連携範囲は製品ごとに確認してください。
3つ目は、「セキュリティ監査やAIガバナンスを支援する機能」です。ISO/IEC 42001は、組織のAIマネジメントシステムに関する国際規格です。操作履歴や利用状況を確認・出力できるかは選定材料になりますが、ツールのレポート機能だけで規格への適合や認証が保証されるわけではありません。自社の監査要件を整理し、必要な記録を取得できるかを見極めましょう。

AX CAMPなら現場成果から逆算した研修を設計できます

安全なAI搭載SaaSの管理体制を構築するためには、技術的な管理や社内ルールの整備に加えて、従業員一人ひとりのAIリテラシー向上も欠かせません。株式会社AXが提供する法人向けAI研修サービス「AX CAMP」は、現場で成果を出すことをゴールにした実践的なカリキュラムを提供しています。
本研修は完全オンラインで受講でき、14時間のeラーニングとAI化計画のプランニング、さらに半年から1年間の伴走支援を組み合わせて設計されています。受講者はプログラミング不要で、PCの基本操作ができれば、実際の業務課題を解決するAIツールの開発スキルを学べます。
例えば、Route66株式会社の事例(Route66株式会社の導入事例)では、原稿執筆時間を最大24時間からAI出力10秒へと大幅に短縮することに成功しました。また、株式会社JIMOSの事例(株式会社JIMOSの導入事例)では、役員や管理職から3段階で全社展開を行い、AI活用の土台づくりを推進しています。
AX CAMPは、実務に直結するAI活用スキルを学ぶための研修です。AI搭載SaaSの検知やアクセス制御などの技術的統制を直接提供する管理ツールではないため、社内ルールの策定や適切な管理ツールの導入と組み合わせて活用しましょう。

まとめ:適切な管理・研修体制を構築して安全なDXを推進しよう
安全なIT環境を構築するためには、社内のSaaS・AI利用状況を把握し、必要な管理機能を備えたツールや社内ルールを整備することが不可欠です。これに加えて、現場がAIを適切に活用するための研修機会を設けることで、組織的なAI活用の基盤を整えられます。
まずは自社のAI利用状況を可視化し、適切なガバナンスを策定することから始めましょう。その上で、技術的な統制と人材育成をそれぞれの役割に応じて組み合わせることが、安全なDX推進への一歩となります。

