「倉庫内のピッキング作業に時間がかかりすぎている」「熟練のスタッフに頼りきりで、ロケーション配置の判断基準が分からない」といった課題を抱えていませんか?物流現場で省人化と効率化を進めるには、従来の固定的な管理から脱却し、蓄積したデータを配置の見直しに活かすアプローチが欠かせません。
本記事では、AI倉庫ロケーション最適化の考え方、期待できるメリット、導入時の検討手順を解説します。後半では、AIによる最適化への対応状況を確認する際の参考として、ロケーション管理や物流施設の統合管理に関連する4つのシステムを取り上げます。
倉庫におけるロケーション管理の基本と重要性

倉庫におけるロケーション管理とは、商品の保管場所を住所のように番地化して管理する仕組みのことです。この管理を徹底することで、どの商品がどこに何個あるのかを把握しやすくなります。
ロケーション管理には、大きく分けて「固定ロケーション」と「フリーロケーション」の2種類が存在します。固定ロケーションは、特定の商品を常に同じ棚に配置する手法であり、定番商品の管理に適しています。一方、フリーロケーションは、空いているスペースに順次商品を保管していく手法で、保管効率を高めるための選択肢です。
多品種小口配送に対応する現場では、在庫の所在と数量をリアルタイムに把握しておくことが求められます。配置管理が不十分だと、商品の探索に時間がかかったり、誤った商品を取り出したりする原因になるため、入出庫や棚卸を含めた運用ルールをあらかじめ整備しておくと安心です。

従来のロケーション管理が抱える限界と課題

エクセルや従来のWMS(倉庫管理システム)を用いた手動のロケーション管理では、需要変動に応じて配置を変更する際に手間がかかることがあります。出荷頻度の変化に合わせて棚割りを手作業で更新する場合、担当者の負担が増えるだけでなく、判断にばらつきが生じるリスクも考慮しておかねばなりません。
配置の判断基準が共有されていない現場では、特定のスタッフの経験や勘に依存しやすくなります。「どの棚に何を置くか」がブラックボックス化すると、担当者が不在の際に同じ基準で判断できないおそれがあります。
また、出荷頻度の低い商品が出荷口の近くに置かれ、頻繁に動く商品が奥の棚に配置されている場合、作業者の移動が増えます。改善にあたっては、出荷頻度だけでなく、商品の寸法や重量、補充作業、安全性、倉庫の通路構成までを網羅して配置を設計していきます。
AIを活用したロケーション最適化で期待できる3つのメリット

AIや最適化アルゴリズムを利用する目的は、倉庫内の実績データを配置判断に生かすことです。以下のメリットはすべての倉庫で自動的に得られるものではありません。現状値と導入後の数値を比較し、自社の環境で効果を検証することが前提です。
①作業動線の短縮によるピッキング効率の向上
過去の出荷実績を基に、出荷頻度の高い商品を取り出しやすい場所へ配置する方法が考えられます。注文単位のデータを利用できる場合は、同時に出荷されることが多い商品の配置関係も検討材料になります。ただし、実際の効果は倉庫のレイアウト、SKU構成、受注傾向、補充方法などに左右されるため、移動距離や作業時間を測定して判断しましょう。

②保管スペースの利用状況を見直しやすくなる
商品の寸法や重量、棚の許容量、空きロケーションなどのデータを整理すると、保管スペースの利用状況をクリアに把握できます。フリーロケーションを採用する場合も、単に空いている場所へ格納するのではなく、重量制限、作業安全性、補充頻度などの制約条件を配置ルールへ組み込んでおきましょう。

③経験に依存しない業務の標準化を支援できる
配置変更の判断基準や作業順序をシステム上で共有すると、担当者ごとの判断のばらつきを抑えやすくなります。画面やハンディターミナルへ作業指示を表示できる場合は、新人を含む作業者が同じ手順を確認できるようになります。導入時は、例外処理やシステム障害時の手順も併せて標準化しましょう。

ロケーション最適化を検討する際の3つの技術要素

ロケーション最適化を検討する際は、需要の分析、配置・経路の計算、既存システムとのデータ連携を分けて確認すると、必要な機能を整理しやすくなります。製品によって対応範囲が異なるため、「AI」という表現だけで判断せず、入力データ、計算内容、出力される指示を確認してください。
①需要予測を配置判断に利用する仕組み
過去の出荷データや季節による変化を分析し、需要が高まる可能性のある商品を配置変更の候補にする考え方です。需要予測機能があっても、その結果がロケーション変更へ自動的に反映されるとは限りません。予測の対象期間、更新頻度、配置案の承認フローを事前に詰めておくのがスムーズな運用のコツです。
②ピッキング経路を計算する最適化アルゴリズム
倉庫の通路や進行方向、立ち入り条件などをデータ化し、複数の商品を取り出す順序や巡回経路を計算する仕組みです。移動距離だけを短くすると補充作業や通路の混雑に影響する場合があるため、検品、梱包、例外処理を含む現場全体で評価しましょう。
③WMSやWESとのデータ連携
配置案や作業順序を現場で利用するには、既存の倉庫管理システム(WMS)や倉庫実行システム(WES)との連携方法を明確にしておきます。APIやファイルによる連携の可否、データの更新頻度、ハンディターミナルやタブレットへの指示反映、障害時の運用を導入前に整理しておくとトラブルを防げます。
システム導入を検討する際の具体的な手順

導入範囲を一度に広げると、配置変更による現場への影響を把握しにくくなります。そのため、まず対象工程と解決したい課題を定め、限定した範囲で検証する方法が考えられます。
最初に、商品マスタの寸法・重量・保管条件と、入出荷履歴、現在のロケーション情報を確認します。欠損や表記の不統一がある場合は、分析に利用する項目と更新ルールを定めて整備します。
次に、特定のカテゴリや一部の棚を対象としたPoC(概念実証)を行います。検証前に、ピッキング時間、移動距離、誤出荷、補充作業への影響など、自社の課題に対応する評価指標を決めます。現行運用と比較して効果や新たな負担を確認した上で、対象範囲を広げるか判断しましょう。
自社に適したシステムを選定する際のポイント

自社に適したシステムを選ぶ際は、機能の多さだけでなく、現場のスタッフが継続的に運用できるかという視点を重視します。高機能なシステムでも、必要なデータを用意できない場合や作業手順に適合しない場合は、想定した効果を得られない可能性があるためです。
既存のWMSとの連携については、APIやファイルによる接続の可否、受け渡せるデータ項目、更新頻度を事前にチェックしておきます。また、現場の作業者が直感的に操作しやすい画面であるか、例外が発生した際にどのようなリカバリー操作を行うかも合わせて見ておくと安心です。
費用を比較する際は、初期費用と利用料だけでなく、データ整備、既存システムとの連携、機器、保守、現場教育にかかる費用も含めて検討します。AI機能については、標準機能、オプション、外部サービスとの連携のどれに該当するのかを確認し、自社データを用いた事前検証が可能か問い合わせましょう。
倉庫のロケーション管理・最適化で参考にできる4つのシステム

ここでは、ロケーション管理や物流施設の統合管理を検討する際の参考例として、公式情報を確認できる4つのシステムを紹介します。AIロケーション最適化システムのおすすめ順位を示すものではなく、すべてがAIによる配置最適化を標準搭載しているわけでもありません。自社が必要とする機能の有無、提供条件、外部サービスとの連携方法は、導入前に各提供会社へ確認してください。
| サービス | 公式情報で確認できる範囲 | 検討時の確認ポイント | 公式情報 |
|---|---|---|---|
| SLIMS | 物流管理におけるゾーン・ロケーション管理 | 必要な配置提案や最適化に対応できるかを確認 | セイノー情報サービス公式情報 |
| GWES | 物流施設の統合管理・最適化を支援するシステム | 対象工程、接続する設備、導入時の提供体制を確認 | BIPROGY公式情報 |
| W3 SIRIUS | ロケーションレベル設定や移動・補充指示などのWMS機能 | AI機能の有無、外部システムやロボットとの連携範囲を確認 | W3 SIRIUS公式マニュアル |
| 蔵人 | 入出庫、棚卸、在庫管理を支援するパッケージ | 需要予測の利用条件と、配置最適化への対応有無を確認 | 蔵人公式情報 |
①SLIMS
セイノー情報サービスの公式情報では、物流管理におけるゾーンやロケーションの考え方が解説されています。一方、AIによる棚割りの自動提案がSLIMSの標準機能またはオプションとして提供されているかは、掲載情報だけでは判断できません。ロケーション最適化を目的に検討する場合は、必要な計算機能と対応範囲を個別に確認してください。出典:セイノー情報サービス公式情報
②GWES
「GWES」は、GROUND株式会社が開発・提供する物流施設統合管理・最適化システムです。BIPROGYは提供パートナーとして案内しています。検討時は、公式ページで案内されている機能を確認した上で、開発元と提供パートナーの役割、対象となる設備や工程、既存システムとの接続方法を整理しておくとスムーズです。出典:BIPROGY「GWES」公式ページ
③W3 SIRIUS
株式会社ダイアログが提供する「W3 SIRIUS」は、ロケーションレベルの設定や移動・補充指示などに対応するWMSです。公式マニュアルではこれらの管理機能が紹介されていますが、AIの標準搭載や自律的なロケーション最適化への対応は、掲載情報だけでは判断できません。求める機能が備わっているか、提供会社へ直接問い合わせてみるのが確実です。出典:W3 SIRIUS公式マニュアル
④蔵人
「蔵人」は、入出庫、棚卸、在庫管理を支援するパッケージです。公式情報では、蓄積した履歴を需要予測へ活用できることが案内されています。一方、AIによるロケーション最適化機能への対応は、掲載情報だけでは判断できません。配置最適化を目的に検討する場合は、需要予測の利用条件とロケーション管理への反映方法を個別に問い合わせておくと安心です。出典:蔵人公式情報
倉庫DXで確認したいAI・ロボット連携の考え方

倉庫DXの選択肢には、管理情報のデジタル化に加え、AIや最適化システムとAMR(自律走行搬送ロボット)、AGV(無人搬送車)などを連携させる構成があります。ただし、実現できる自動化の範囲は、設備構成、対象工程、既存システムとの接続条件によって異なります。導入時は、各製品の公式仕様と自社環境への適合性を確認してください。
ロボットが棚を移動させたり、作業者の元へ商品を運んだりする「Goods to Person(G2P)」も、ピッキング工程を設計する際の選択肢です。一方、補充、検品、梱包、例外処理などでは人の作業が残る場合があります。特定の方式を採用する前に、対象工程を明確にし、現行の移動距離や処理時間と比較できる検証計画を立てましょう。
また、DXを進めるには、技術の導入だけでなく、現場の課題を整理してデジタル技術の活用につなげる人材の確保も欠かせません。経済産業省やIPAが策定した「デジタルスキル標準(DSS)」(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/index.html)では、DXを推進する人材に求められる役割やスキルが整理されています。

AX CAMPは業務課題に合わせたAI人材育成と実務活用を支援します

倉庫を含む業務現場でAI活用を検討するには、現状の課題を分解し、必要なデータや検証方法を整理できる人材の育成に注力したいところです。株式会社AXが提供する法人向けAI研修サービス「AX CAMP」(https://a-x.inc/)は、業務課題の整理から実務でのAI活用までを支援する研修サービスです。
AX CAMPは、倉庫ロケーション最適化システムそのものを提供するサービスではありません。AIの基礎やプロンプトエンジニアリング、AIエージェントの構築などを学び、自社の業務課題に応じたAI活用を検討するための知識と実践力の習得を支援します。研修内容、受講条件、支援範囲などの詳細は公式ページでご確認ください。
株式会社JIMOSの事例(https://a-x.inc/case/d2c-ai-foundation-3-phase-rollout/)では、役員・管理職から段階的に全社展開を行い、AI活用の土台づくりを進めた取り組みが紹介されています。この事例は倉庫ロケーション最適化の導入実績を示すものではありませんが、組織内でAI活用を広げる際の進め方を検討する参考になります。
https://a-x.inc/service/ax_camp/まとめ:AI倉庫ロケーション最適化は自社データで効果を検証しよう
AIや最適化技術を用いたロケーション管理は、出荷実績や在庫情報を配置判断に生かすための手段です。歩行距離や作業時間、スペースの利用状況など、改善したい指標を明確にした上で、自社の倉庫環境における効果を慎重に見極めていきます。
システムを比較する際は、AI機能、通常のWMS・WES機能、ロボットや外部サービスとの連携機能を区別して整理します。本記事で取り上げた4つのシステムも対応範囲が異なるため、公式情報と提供会社への確認を通じて、自社に必要な機能を丁寧に見極めていきましょう。
まずは商品マスタや入出荷履歴を整理し、現場で発生している移動や待ち時間を測定するところから始めてみてはいかがでしょうか。


