AIの内部統制とは?必要性が高まる背景と最新ガイドラインに基づくリスク対策

AI内部統制とは?必要性が高まる背景と最新ガイドラインに基づくリスク対策

「生成AIを業務に導入したけれど、セキュリティや法令遵守の面で問題がないか不安」「AIに関連する内部統制をどのように構築すればよいのか分からない」と悩んでいませんか?AI技術の進化スピードに対して、社内のルール整備や監査体制が追いついていない企業は少なくありません。この記事では、そのような不安を解消するために、2026年におけるAI内部統制の基本から実践的な対策までを体系的に整理してお伝えします。

2026年3月31日に公表された「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を踏まえ、具体的な構築手順やリスク対策を理解することで、企業の信頼性を高めながらAIを活用する方法が分かります。ぜひ最後まで読み進めて、自社のガバナンス強化にお役立てください。


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AIの内部統制が必要とされる背景

AI内部統制の必要性が高まる背景を表す図解イラスト

AI内部統制が必要とされる理由は、従来のITシステムとは異なる「自律性」や「ブラックボックス性」という特性をAIが持っているからです。これまでのIT全般統制(ITGC)は、あらかじめ決められたプログラムが想定通りに動くことを前提に設計されていました。しかし、生成AIは入力データに応じて出力を変化させるため、従来の管理手法だけでは予期せぬ動作やリスクに十分対応できない場合があります。

2026年現在、多くの企業で生成AIの業務利用が広がり、意思決定の支援や顧客対応への活用が進んでいます。このような環境下では、AIの判断プロセスやデータの取り扱いを適切に管理する仕組みが欠かせません。統制が不十分なままAIの活用を広げてしまうと、企業の社会的信用を損なう問題に発展する恐れがあります。

また、AIが参照するデータの信頼性や、出力された結果の妥当性を継続的に検証するプロセスも欠かせません。AI内部統制は、単に技術的なエラーを防ぐだけでなく、企業が社会的な責任を果たしながら持続的に成長するための土台となります。経営層やDX推進担当者は、この新しい統制のあり方を正しく理解した上で、自社の利用状況やリスクの大きさに応じた管理体制を整備していく姿勢が望まれます。

生成AIの普及に伴う新たな2つのリスク

生成AIの普及に伴う新たな2つのリスクを表す図解イラスト

生成AIの普及は業務効率を向上させる一方で、企業経営に直接的な新たなリスクをもたらします。具体的には、従来のセキュリティ対策だけでは十分に対応できない「情報の取り扱いに関するリスク」「出力情報の信頼性に関するリスク」の2つに大別されます。これらのリスクを正しく把握することが、効果的なAI内部統制を設計するための第一歩となります。

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1. 情報漏洩や著作権侵害のリスク

生成AIの利用において警戒すべきなのは、社内の機密情報や顧客の個人データが不適切に外部へ送信・保存されるリスクです。クラウド型AIサービスに入力した情報がモデル改善などに利用されるかどうかは、サービス、契約、利用プラン、設定によって異なります。また、学習への利用が直ちに第三者への出力を意味するわけではありません。ただし、従業員が利用条件を確認せずに顧客情報や未公開の技術データを入力すれば、意図しない保存や目的外利用などの情報管理上の問題が生じる可能性があります。

さらに、AIが生成した文章や画像が既存の著作物と類似し、利用方法によっては著作権上の問題が生じるリスクも無視できません。企業が商用目的でAIの生成物を利用する際には、事前に類似性や利用条件をチェックし、疑義が生じた場合は法務担当者や専門家へ速やかに相談できるフローを確立しておくと安心です。個人情報の扱いは個人情報保護委員会の生成AIサービス利用時の注意喚起、著作権は文化庁のAIと著作権もあわせて確認してください。

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2. 誤情報の拡散やハルシネーションのリスク

もう一つの重大なリスクは、AIが事実とは異なる情報をもっともらしく出力する「ハルシネーション(幻覚)」現象です。生成AIは確率的に文章を生成する仕組みであるため、専門的な知識や最新の事実について、根拠の確認できない内容を回答することがあります。この誤情報を従業員が鵜呑みにし、そのまま顧客への提案書や外部向けのプレスリリースに使用すると、企業の信頼性を損なう恐れがあります。

ハルシネーションによる誤情報の拡散を防ぐ対策として、業務の重要度やリスクに応じて、AIの出力を人間が確認する「Human in the Loop(人間の介在)」のプロセスを組み込む手法が挙げられます。確認手続が不十分な場合は内部統制上のリスクとなり得ますが、重大な不備に該当するかどうかは、対象業務の性質や財務報告への影響度、発生可能性を踏まえて個別に判断します。実務においては、AIの出力をそのまま最終成果物とせず、信頼できる一次情報との照合や承認手続を行うルールを定めておくことが推奨されます。


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AIの内部統制を構築するための基本フレームワーク

AI内部統制を構築するための基本フレームワークを表す図解イラスト

AI内部統制を構築する際は、既存の内部統制基準である「COSOフレームワーク」を参考にしながら、AI特有の要素を組み込む方法があります。COSOが示す「統制環境」「リスク評価」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」の5つの構成要素に、AIの導入から運用、見直しまでの管理を当てはめることで、評価項目を整理しやすくなります。

さらに、COSOは2026年2月23日、生成AIに関する補足ガイダンス「Achieving Effective Internal Control Over Generative AI」を公表しました。この資料は、従来のCOSOフレームワークを生成AIの導入・利用に当てはめ、生成AI特有のリスクに対する内部統制を検討するための補足資料です。企業が自社のガバナンスを設計する際は、従来の5つの構成要素を土台としつつ、この補足ガイダンスや公的なAIガイドラインを自社の利用目的に照らし合わせて読み解くアプローチが適しています。

具体的には、まず「統制環境」において、経営陣がAIの倫理的利用やガバナンスに対する明確な方針を示します。「リスク評価」では、AIモデルやサービスの選定からデータの入力、出力の利用に至る各プロセスで発生し得るリスクを洗い出します。そして「統制活動」として、データのアクセス権限管理、出力結果の確認、サービスやモデルの変更管理といった具体的なコントロールを設計します。

さらに、「情報と伝達」では、AIの利用状況や発生したトラブルの情報を社内で共有するルートを確立します。「モニタリング」では、出力品質の変化や不適切な利用がないかを継続的に確認します。対象となるAIの種類や業務上の重要度に応じて各統制を組み合わせ、定期的に有効性を見直すことが大切です。

内部監査におけるAI活用の2つのメリット

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AIは統制されるべき対象であると同時に、内部監査を支援するツールとしても真価を発揮します。これまで多くの時間と人手を要していた監査手続にAIやデータ分析を導入すれば、全件データの検証が可能になるほか、異常値や確認すべき項目を効率的に絞り込めます。ここでは、内部監査部門がAIを活用するにあたって期待できる2つのメリットを整理します。

1. 監査業務の効率化と自動化

従来の内部監査では、膨大な取引データや契約書の中から一部を抽出して検証する「サンプリング監査」が用いられてきました。生成AIやデータ解析AIを活用すれば、すべての仕訳データや対象ドキュメントを機械的な分析の対象とする「全件分析」が可能になる場合があります。契約書の条項を抽出し、社内規定や確認条件に照らして、人が精査すべき候補をリストアップする仕組みも考えられます。

ただし、全件分析を行ったからといって監査手続そのものが自動的に完了するわけではありません。証憑の状態やデータの品質、モデルの精度によっては、監査担当者による追加確認や専門的な検証が欠かせないケースもあります。AIに定型的な照合や候補抽出を任せることで、担当者はリスクシナリオの分析や被監査部門への改善提案など、高度な判断を要する業務に注力しやすくなります。

2. 異常値検知の精度向上

機械学習を用いた分析では、従来のルールベースのシステムだけでは抽出しにくかった取引パターンを、異常候補として検知できる場合があります。例えば、過去の取引傾向と異なる時間帯の処理や、通常と異なる承認経路を通った取引を抽出し、担当者の確認につなげる使い方が考えられます。これにより、不正や誤りの兆候を早期に調査できる可能性があります。

また、自然言語処理技術を用いて社内文書などを分析し、コンプライアンス上の確認が必要な表現を抽出する仕組みも考えられます。ただし、メールやチャットを解析対象とする場合は、プライバシーの保護や労務上のルール、アクセス権限の設定に十分配慮しなければなりません。AIの検知結果には誤検知や見逃しがつきものであるため、最終的には人の目で確認し、判定基準を継続的にチューニングしていく運用が不可欠です。

経済産業省などのガイドラインに基づく対応策

経済産業省などのガイドラインに基づく対応策を表す図解イラスト

企業がAI内部統制を整備する際は、政府や公的機関が策定したガイドラインを参考にすることが有効です。経済産業省と総務省は、2026年3月31日に「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を公表しています。同ガイドラインは、AIの開発者、提供者、利用者による自主的な取り組みを支援する指針であり、すべての企業に一律の法的義務や適合要件を課すものではありません。

同ガイドラインでは、AIに関わる事業者が考慮すべき共通指針が示されています。「安全性」「透明性」「プライバシー保護」「公平性」などはその一部であり、これら4項目だけでガイドライン全体を表すものではありません。企業は公式資料で全体像を把握した上で、自社の役割や利用目的、想定される影響度に応じて、具体的な確認項目や運用体制へと落とし込んでいく手順を踏みます。例えば、外部のAIサービスを導入する際には、ベンダーのセキュリティ対策やデータの保存・利用条件、出力の利用制限などを事前にチェックするプロセスを設けるとスムーズです。

公的ガイドラインは技術の進歩や社会情勢に応じて更新される可能性があるため、参照した版番号と公表日を記録し、定期的に運用を見直す体制が欠かせません。ガイドラインを参考にした取り組みを外部に説明する際も、単に「準拠」と表現するのではなく、自社がどの指針をどのように実務へ反映しているかを具体的に開示するのが望ましい対応です。また、法令への適合性については、対象となる業務やデータに応じて個別に確認を進めます。

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AIガバナンス体制を構築する手順

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AI内部統制を実効性のあるものにするためには、組織全体を巻き込んだガバナンス体制の構築を段階的に進めることが欠かせません。場当たり的にルールを作るだけでは現場で運用されず、形骸化してしまう恐れがあるためです。以下の「3つのステップ」に沿って、計画的に体制を整備していく方法があります。

ステップ1:現状把握とAI利用規約の策定

まずは、社内のどの部門で、どのようなAIツールが、何の目的で使われているかを調査します。その上で、全社共通の「AI利用ガイドライン」や方針を策定します。ここでは、利用可能なAIツールの指定、入力してはいけないデータの定義、出力物の検証手順といった具体的なルールを明文化します。

ステップ2:推進組織(AI倫理委員会など)の設置

次に、必要に応じてガバナンスを統括する組織や会議体を設けます。IT部門やセキュリティ担当者に加え、法務、コンプライアンス、内部監査、現場の事業部門など、自社の体制に応じた関係者を参加させます。複数の観点からAI利用のリスクを評価し、問題発生時の報告先や意思決定者を明確にします。

ステップ3:継続的な教育とモニタリング体制の確立

ルールや組織を作るだけでなく、従業員への教育を継続的に実施し、AIを安全に利用するための知識を浸透させます。同時に、ルールが遵守されているかを定期的に確認し、技術、サービス、業務の変化に合わせて内容を更新するサイクルを回します。

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企業のITアセットマネジメントとライセンス管理

企業のITアセットマネジメントとライセンス管理を表す図解イラスト

AI内部統制を機能させる上で見落としがちなのが、社内で利用されているAIツールやAPIのライセンス管理です。現場の従業員が会社の許可を得ずに、個人アカウントでAIサービスを業務に利用する「シャドーAI」の乱立は、セキュリティ上の大きな脅威となります。企業としては、自社が保有するITアセットの一部として、利用されているAIツールを一元的に把握・管理する仕組みづくりから着手するのが賢明です。

具体的には、社内で利用を認めるAIサービスをホワイトリスト化し、それ以外のサービスの利用を制限する対策が考えられます。また、有料のAIサービスやAPIを導入する際には、契約内容や利用規約を精査し、入力データの保存期間、モデル学習への利用の有無、管理者向けの設定などを把握するプロセスを設けます。利用条件はサービスや契約プランによって異なるため、「オプトアウト可能」という表記だけで安心せず、自社の情報管理方針に合致しているかを個別に検証する手順を踏みましょう。

さらに、AIツールの利用状況やコストを可視化することで、不要なライセンスの解約や、より安全で効率的なツールへの集約が可能になります。ITアセットマネジメントの枠組みにAIを組み込むことは、セキュリティの確保だけでなく、IT投資の適正化という観点からも重要な取り組みです。

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ESG投資やTISAXとの関連性

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AI内部統制の整備は、社内のリスク管理にとどまらず、企業がガバナンスや社会的責任への取り組みを外部へ説明する際にも大きな意味を持ちます。ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点では、AIの倫理的かつ安全な利用に関する方針や監督体制が、企業評価における検討材料となるケースが増えています。ただし、評価方法や重視される項目は投資家や評価機関によって異なるため、AI内部統制の有無だけで投資判断が左右されるわけではない点に留意しておきましょう。

また、自動車業界の取引では、TISAX(Trusted Information Security Assessment Exchange)への対応を求められる場合があります。TISAXは一般的な製品認証やISO認証ではなく、VDA ISAに基づいて情報セキュリティの評価結果を相互に承認・交換する仕組みです。取引先から特定の評価レベルを求められることはありますが、すべての企業や取引で必須となるものではなく、AI内部統制そのものを独立した必須要件として一律に要求する制度でもありません。

AIを利用する企業にとって、アクセス管理、データ保護、委託先管理などを適切に運用することは、取引先から求められる情報セキュリティへの対応にも役立ちます。経営層は、適用される制度や取引条件を個別に確認しながら、AI内部統制を既存の情報セキュリティ管理やリスク管理体制と有機的に連携させ、一体となって運用していく方針を示すことが推奨されます。

AX CAMPなら安全なAI活用と現場での実務定着を支援できます

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株式会社AXが提供する法人向けAI研修サービス「AX CAMP」は、AIの操作方法を学ぶだけでなく、業務課題を整理し、AI活用を実務へ落とし込むための研修と伴走支援を提供しています。完全オンラインで受講でき、14時間のeラーニングとAI化計画のプランニング、そして半年〜年間の伴走支援を組み合わせることで、プログラミング不要でPCの基本操作から実践的なAI活用スキルを身につけられます。AI内部統制の評価やガバナンス体制の構築を代行するサービスではありませんが、自社が定めた利用ルールを従業員へ浸透させ、安全性に配慮しながらAI活用を現場へ定着させたい企業を支援します。

実際に、AX CAMPを導入した企業では、業務へのAI活用を通じた成果が生まれています。例えば、Route66株式会社では、AIの活用により、従来最大24時間かかっていた原稿執筆時間をAI出力10秒へと短縮しました(出典:Route66株式会社 導入事例)。

また、株式会社JIMOSでは、役員・管理職から3段階で全社展開を行い、安全にAIを活用するための土台づくりを推進しています(出典:株式会社JIMOS 導入事例)。このようにAX CAMPは、企業が定めた方針やルールを前提として、従業員のAIリテラシー向上と実務活用の定着を支援します。

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まとめ:AIの内部統制を整備して企業の信頼性を高める

AI内部統制は、生成AIがもたらすさまざまなリスクに対応し、安全にビジネスへ活用するための基盤となる取り組みです。情報漏洩やハルシネーションといったリスクに対処するためには、既存の内部統制の枠組みや政府のガイドラインを参考にしながら、自社の利用状況や業務プロセスに即したガバナンス体制を段階的に構築していくアプローチが有効です。

ルールを整備し、従業員への教育を継続することは、企業の社会的信頼を高め、AI活用を安定的に進めるための基盤となります。

自社だけで体制を構築することに不安がある場合は、法務、情報セキュリティ、内部監査などの専門家に相談することも有効です。また、定めたルールを現場へ浸透させ、実務でのAI活用を定着させる際には、法人向け研修や伴走支援の活用も選択肢となります。

適切なAI内部統制の整備を通じて、企業の持続的な成長と信頼性の向上を目指しましょう。


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